2015/08/20

追悼 / Tree

延々と轟く雷と、滝のような雨の音。荒れ狂った空に不安で眠れなかった夜。
夜が明けると、土砂に埋もれた家々、崩れた川岸、流された車。
夕方まで穏やかだった目の前の川が一変、濁流となっていた。
けたたましくヘリコプターが飛び回る、サイレン、非難指示の警報。
膝まで泥に浸かった線路やスーパーマーケット、幼稚園。

あれから1年。亡くなった方々、遺された家族、痛ましい風景。
まだ癒されない胸の痛みは、ちくりと思い出と共によみがえります。

忘れずにいたい景色は、胸の中。
私の大好きな木は、そこにいて、大きく枝葉を広げて、夏の陽射しを浴びています。

今朝はショベルカーが散歩道で、崩れた山肌に爪を立てていました。
川の向こう岸から見つめるだけで、もう1年、通行止めの散歩道。
今は当たり前になってしまった風景に慣れてしまって、あの夜の恐ろしさも薄れてしまって…

だから、1年の日を迎える今日。
大好きだった景色を愛おしむ。
一晩で姿を消した、今でも大切な大切な、大好きな…


大好きな木 新緑の頃 一斉に芽吹いて


 新しい柔らかな葉が 光に輝いて眩しかった


 真夏の陽射しの中でも力強く


 魚も鳥も鹿もみんなの憩いの場所


 そこにあるだけで よかった


 触れてみたくて 近づきたくて そっと


 葉が落ちても 水面に映って優しかった


 雪の頃 静寂の中 凛と 神々しく美しく



 大好きな 木
あなたにどれだけ癒されただろう…  今も。
訪れる悲しみも喜びも人それぞれ。
私の喜びは、この場所を通る度に、この木を思い出せる自分がいるということ。
いつも堂々と、しっかり立っているんだ。

ありがとう、元気で。

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